朝の私鉄のホームで、同じ制服が三人ぶん並ぶと、その学校の空気がなんとなく見えてくる。スカートの丈も、靴下の長さも、リボンの締め方も、三人で示し合わせたわけではないはずだ。それでも揃っている。あれは制服が揃えているのではなく、その学校の空気が揃えているのだと、私は思っている。

制服は、日本でいちばん奇妙な服ではないか。着る人が選んでいない。買う人と着る人が違う。デザイナーの名前は表に出ない。それなのにこの国では、「制服がかわいいから、その学校を受ける」という選び方が、冗談ではなく成立してしまう。選べないはずの服が、学校という大きな買い物を選ばせている。

この奇妙さを、今回は私の印象ではなく、資料のほうから辿ってみたい。使うのは主に二つ。制服メーカーである菅公学生服が公開している一連の意識調査と、公正取引委員会が公立中学校の制服取引を調べた報告書だ。出典は末尾にまとめて置いた。

先に、この記事の立ち位置を断っておきます。当サイトは「かわいい制服ランキング」を作りません。特定の学校名を、制服のかわいさで順位づけて並べることはしません。生徒が特定される形で、未成年の容姿に関する序列を当サイトが作ることは避けたいからです。この記事が扱うのは、順位ではなくそういう選び方が成立している仕組みのほうです。

また、冒頭のホームの光景をはじめ、この記事で私が「見かけた」と書く場面は、いずれも街を歩く観察者としての随筆であり、特定の個人・学校の記録ではありません。数字と制度の話だけが、資料に基づく事実です。

ハンガーに掛かった学生服のブレザーとプリーツスカート、リボンタイ、ローファーと靴下を線画で描いたイメージ

1. 「気になった」は、ちゃんと数字になっている

菅公学生服が2025年4月に、全国の中学・高校生1,200人へ行ったインターネット調査がある。進学先の学校の制服がどのようなデザインか気になったか、という設問に、「とても気になった」が全体21.4%。男子11.7%に対して女子は31.2%。「どちらかと言えば、気になった」(全体35.9%)を足すと、気になったという回答は全体で57.3%、女子では71.7%になる。進学という、その後の三年間を決める場面で、女子の7割が制服のデザインを気にしている。

ただ、同じ調査で私が面白いと思ったのは、進学時に知りたい情報を複数回答で聞いた結果のほうだ。最も多かったのは「部活動」(中学生65.1%、高校生46.4%)で、制服が一番ではない。ところが中学生に限ると、「学校制服・デザイン」が57.3%、「校則や服装規定」が53.1%で、どちらも上位に来る。

ここを、いちばん書いておきたかった。制服と校則が、セットで知りたがられている。どんな服かと、その服をどう着ることが許されるか。中学生はその二つを、ほとんど同じ重さで見に行っている。服そのものより、その服を着て過ごす三年間の空気を測ろうとしているのではないか。

この数字の読み方について。これらは制服メーカー自身が行い、自社サイトで公開している調査です。インターネットリサーチであり、対象は同社が集めた中学・高校生1,200人。制服を作って売っている会社が「制服は気にされている」と示す調査ですから、その分は差し引いて読んでください。

なお同社には2014年7月に高校生2,000人へ行った同種の調査もあり、そちらでは高校への進学・受験の際に制服が気になったという回答は、男子が「とても」2.2%・「少し」15.2%、女子が「とても」17.0%・「少し」40.3%でした。ただし対象(高校生のみ/中高生)も選択肢の文言も違うので、2014年と2025年を並べて「関心が高まった」と読むことはできません。別々の年に、別の相手へ聞いた、別の調査です。

2. 学校の側も、その視線を知っている

では、見られている側——学校はどうしているか。

ここで資料が変わる。公正取引委員会が2017年(平成29年)11月29日に公表した、「公立中学校における制服の取引実態に関する調査」の報告書だ。競争政策の観点から、制服がどう指定され、どう売られているかを調べたもので、全国の公立中学校約1万校から抽出した600校への書面調査(回答447校・回収率74.5%)と、45名への聴取調査でできている。

この報告書に、学校が制服の仕様を変える理由が四つ、並んでいる。

  • ①学校の周年記念事業の一環
  • ②制服の仕様が異なる学校の統合
  • ③生徒・保護者等からの、仕様が古くなった制服を変更してほしいという要望
  • ④学校選択制を踏まえて多くの生徒を集めたい

四つめだ。役所の報告書の、淡々とした箇条書きの四番目に、それは書いてある。

同じ報告書の、学校から聴き取った事例のところには、もっとはっきりした一文がある。

「学校選択制への移行等を踏まえ,魅力的な制服にすることで多くの生徒を集めるために,制服を刷新することとした。複数の制服メーカーによるコンペの結果を受け,教職員,PTA役員を対象にアンケートを実施し,B社(制服メーカー)に決定した。」

コンペをやっているのだ。複数の制服メーカーを呼んで、案を出させて、教職員とPTA役員のアンケートで決める。生徒を集めるために。

アパレルの仕事として見れば、これはごく普通のコンペだ。オリエンがあり、複数社が提案し、決裁者がいて、決まる。違うのは、決めるのが学校とPTAで、着るのが中学生で、そしてその服が三年間、毎日、強制的に着られるということだけだ。

もっとも、報告書全体を読むと、制服を作りかえること自体はそう頻繁ではない。直近5年度に仕様変更を行った学校は8.9%、十校に一校弱だ。そして仕様変更の際に重視した点(複数回答)は、「機能性」が79.5%で最多、次いで「生徒,保護者等の意見」53.8%、「デザイン」と「生徒・保護者への販売価格」が各48.7%だった。

デザインは一位ではない。報告書は機能性の中身として、家庭で洗濯ができる素材、はっ水・速乾性のある素材、丈直しが容易にできる、ポケットが多くある、着脱しやすい、といった点を挙げている。制服の刷新は、まず家事の話なのだと、この順位からは読める。

それでも、変えた先はだいたい同じ方向を向いていた。報告書は仕様変更後について「男子生徒,女子生徒共に独自仕様のブレザーへの仕様変更が多くみられた」としている。詰襟やセーラー服ではなく、その学校だけのブレザーへ——仕様を変えた学校の多くはそちらへ向かった、と読める。「独自仕様」という言葉が、ここでは効いている。学校を選んでもらうための服は、他所と同じでは困るのだ。

ついでに、服の商売の側から見ると見逃せない数字を一つ。現在指定している制服の意匠権を、60.8%の学校は保有していないと回答している。意匠権とは、物品の形状・模様・色彩といったデザインについての権利のことだ。学校の名前を背負った服のデザインが、権利としては学校の手元にない場合のほうが多い。

そして価格。報告書によれば、制服一式(制服と、シャツなど学校指定の付随品目を合わせたもの)で最も多い価格帯は3万円以上3万5000円未満。2017年時点の調査の数字で、いまの価格ではない。それでも、入学時に一度で三万円台の買い物であることの見当はつく。「かわいい制服」の話は、どこかでこの金額に着地する。

この報告書の範囲について。調査対象は入学者選抜を実施していない公立中学校だけで、調査は平成28年12月から平成29年7月にかけて行われました。私立や高校の話ではありませんし、いまから約9年前の調査です。「制服のかわいい高校が人気」という話にそのまま当てはめることはできません。ここで確かなのは、選抜のない公立中学校ですら、生徒を集めるために制服を作りかえた学校が実在したということです。

3. 校則は、流行の化石でできている

着る側に戻って、着崩しの話。菅公学生服が2025年4月に中学・高校生1,200人へ聞いた、学校で流行っている制服のアレンジ(複数回答)は、こうだった。

  • スカート丈を短くする 30.5%
  • ネクタイ・リボンをずり下げる 13.5%
  • 上着のボタンを全て開けて着る 13.5%
  • スカートの下にジャージを穿く 13.3%
  • シャツのボタンを外して胸元を開ける 13.0%
  • 特にない 31.7%

最多のアレンジ(30.5%)と「特にない」(31.7%)が、ほぼ同じ高さで並んでいる。

同じ調査で、学校の服装規定に定められているものを聞くと——

  • スカート丈の長さ指定(短い・長いなどの禁止) 47.3%
  • 靴下の丈・色・デザインの指定 39.8%
  • スカートの下にジャージを穿くことの禁止 36.0%
  • ベスト・セーターの色やデザインの指定 32.6%
  • シャツのボタンを外すなどして胸元を開けることの禁止 30.6%
  • 学校指定品以外の着用禁止 30.5%
  • コート・ウィンドブレーカーなどの防寒具の色やデザインの指定 25.9%
  • マフラーの色やデザインの指定 11.4%
  • 下着の色の指定 8.4%

二つの表を並べてみてほしい。スカート丈がどちらの一番上にもあり、スカート下のジャージも、胸元も、両方の表に出てくる。流行っているアレンジの一覧と、禁止されている項目の一覧が、裏返しになっている。同社自身も考察で、服装規定について「その多くは学校で流行っている制服のアレンジを禁止する内容でした」と書いている。

校則というのは、つまり過去に流行した着崩しの化石なのだと思う。誰かが最初にスカートを折った。折る子が増えた。学校が丈を規定した。規定は残る。流行が去っても、残る。「下着の色の指定」を挙げた生徒がいまも8.4%いるのは、どこかの時代に誰かがそれを問題にした跡なのだろう。ある学校の校則を読むことは、その学校で何が流行ったことがあるかを読むことに、かなり近い。

ただし同社は考察で、「昔に比べて制服をアレンジする着崩しは少なくなってきているようです。」とも書いている。これは同社の見立てであって、統計で検証された結論ではない。それでも「特にない」が31.7%という数字と並べると、その見立てと矛盾はしない。

4. スカート丈と靴下丈の、短い年表

では、いま何が「かわいい」とされているのか。

同社が2025年4月に女子中学・高校生600人へ聞いた調査では、かっこいい・かわいいと思うスカートの長さは「ひざ上5cm」が49.2%で半数。次いで「ひざ中心」20.7%。「ひざ上10cm以上短い」は16.5%で、2割に届かない。

足元(複数回答)はこうだ。

  • ショートソックス(足首より上の丈) 37.8%
  • スニーカーソックス(くるぶしまで) 30.8%
  • タイツ 18.2%
  • ハイソックス 17.8%
  • レギュラーソックス(ふくらはぎ丈) 13.3%
  • ルーズソックス 4.3%

同社は考察で、スカート丈の流行をこう書いている。「昭和時代には足首が隠れるような長いスカート丈が女子中学・高校生の間で人気でしたが、平成時代になると一転して短いスカート丈が流行となり、令和時代にはひざ丈のスカートが人気で、スラックスの着用も増えています。」制服メーカーによる歴史の要約であって、私が年代ごとの史料に当たって確かめたものではない。そのつもりで読んでほしい。

それでも、この一文に足元の表を重ねると、見えてくるものがある。いま人気の丈は「ひざ上5cm」で、靴下は足首より上の「ショートソックス」。スカートの丈が動くたびに、脚をどこで見せるかの位置が動いてきて、いまはその位置が、ひざ上5cmと足首のあいだに落ち着いている。長さの話というより、切る位置の話なのだ。

ルーズソックスについて、同社は「過去のデザインやスタイルが新鮮に見えるなどの理由で再評価されています」と書き添えている。ただ、同じ調査での実数は4.3%。「復活した」と書くには、まだ小さい。原宿や渋谷で見かけるあの靴下は、通学のためというより、選んで履かれている一足なのだろう。

もう一つ、丈とは別の軸がある。同社が同じ2025年4月の調査で、性別に関係なく自分が着たいタイプの制服を着られるかを聞くと、「着ることができる」が全体64.8%(中学校76.3%、高校61.9%、公立66.7%、私立60.7%)。ただし「着ることができない」という回答も1〜2割あった。同社はこれを、性別にとらわれない制服の選択肢を「許可している学校が増えているようです」と読んでいる。一方で、女子中高生600人への別の調査では、着用したいのは「スカート」78.2%、「どちらも」13.2%、「スラックス」8.7%。選べるようになることと、選ばれるものが変わることは、別々に進んでいる。

5. 制服が、学校の外へ出るとき

制服は、学校と通学路の外でも着られている。同社が2014年7月に高校生2,000人へ聞いた調査に、学校内・通学時以外で制服を着る場面(複数回答)がある。修学旅行57.5%、部活動49.8%、校外学習44.9%、そして冠婚葬祭39.7%、塾などの習い事10.6%、ボランティア活動9.3%。

冠婚葬祭が4割。多くの十代にとって、制服は最初に持つフォーマルウェアでもある。就職活動のスーツより先に、礼服として通る服を、彼らはすでに一着持っている。

ただ、この選択肢には「遊びに行くとき」がない。だから制服で遊びに出かける習慣について、この調査からは何も言えない。

ここで正直に書いておきます。卒業した人たちが制服を着てテーマパークへ出かける、という話は広く語られています。ただ、この記事のために私が確かめた範囲では、その現象の規模や頻度を示す一次資料に到達できませんでした。目についたのは、アフィリエイト目的のまとめ記事ばかりでした。運営会社の公式サイトにある規則も、この記事の中では確かめきれていません。ですから、特定のテーマパークの服装規則については書きません。資料が無いのではなく、私が確かめられていない——それだけ残しておきます。

代わりに、確かめられたことのほうを書く。

制服は、いま学校の外で商品になっている。原宿に事務所と店を置くCONOMi(株式会社このみ)は、自社の通販サイトで「原宿発の制服ブランド」と名乗り、ブレザー、スカート、セーラー服、リボン、ローファーを一般に売っている。会社概要によれば創業は1991年、設立は2006年。事業内容にはこうある——「学生制服企画・販売・卸売、インターネット通販、制服レンタル、アパレルOEM、衛生マスク企画・販売、日本制服アワード運営開催、くるりん裾上げシート企画・販売」。

「制服レンタル」が事業内容に入っている。そして同社の通販サイトには「ディズニー」という商品カテゴリがあり、そのページは「ディズニーデザイン」と題されている。制服を、学校からではなく店から買う、あるいは借りる市場が、原宿に実在する。その市場が誰を客にしているかまでは、この資料からは読み取れない。

同じ会社が、もう一つ面白いことをやっている。日本制服アワードのデザイン部門だ。「第9回日本制服デザインアワード」は文化服装学院との共催で、「今、日本一着たい制服をデザインするコンテスト」を掲げる。受賞特典は、デザイン画を実際に制作してプレゼント、CONOMi制服一式、そして文化服装学院の入学金相当を給付(入学者のみ)。

制服は、着る人が選べない服だった。ところがこのコンテストでは、着ている当人たちがデザインする側に回り、その先に服飾専門学校の入学金が置かれている。選べない服を毎日着てきた人に、服をつくる側へ抜ける道が一本、引いてある。制度の出口として、これは悪くないと思う。

ちなみに、制服を専門に研究する部署は、メーカーの中にちゃんとある。学術誌『繊維製品消費科学』には、株式会社トンボ ユニフォーム研究室の佐野勝彦による「なんちゃって制服」(2015年、56巻1号)と、菅公学生服 学生工学研究所の原田季典による「学校制服の過去,現在,未来 ~社会・教育・消費者の変化と共に~」(2018年、59巻6号)が載っている。本文は購読者向けで、私は読めていない。読めたのは表題と、著者の所属だけだ。それでも、「ユニフォーム研究室」の人が学会誌に「なんちゃって制服」を書いている——この国で制服がどういう扱いを受けているか、それだけでだいたい分かる。

6. 選べない服を、どう着るか

最後に、もう一つだけ数字を。

菅公学生服が2026年1月に中学・高校生1,064人へ聞いた調査で、制服を着ることによる安心感(複数回答)の上位はこうだった。「周囲と浮かずに過ごせる」47.0%、「服装のセンスを比べられなくて済む」42.5%、「同じ学校の生徒だという一体感ができる」33.6%。さらに「服装による仲間外れや、いじめが起こりにくい」20.1%、「体型や外見のコンプレックスを目立たなくしてくれる」14.2%。

制服の安心の上位二つが、「浮かない」と「比べられない」。ファッションの話としては、なかなか痛い数字だ。回答した中高生の半数近くが「浮かない」ことに、四割強が「比べられない」ことに、この服の安心を見ている。

それでも同じ調査は、制服のデザインが「かっこいい・かわいい・おしゃれ」だとしたらどうかと仮定で聞いていて、「学校に行く気分が上がる」46.0%、「髪型や身だしなみも整えたくなる」40.0%、「気持ちがポジティブ(前向き)になる」31.8%、「毎日が楽しくなる」30.5%という答えが返っている(あくまで「だとしたら」の設問だ)。

比べられなくて安心する服と、着ると気分が上がる服。制服は、その両方を同時にやらされている。しかもそれを毎日、三年間。

冒頭のホームに戻る。三人ぶんの制服が並んで、なんとなく揃って見えたあの光景を、私はまだ引きずっている。あれは三人が示し合わせたのでもなく、校則が揃えたのでもない。スカートを一折りするかしないか、その一折りの中にしか、彼女たちの選べる余地がなかった。そう考えると、着崩しというのは反抗というより、与えられた服の中で、自分の分だけ動かせる場所を探す作業だったのだと思えてくる。そして学校はその一折りを校則に書き留め、メーカーはそれを調査にかけ、原宿の店はそれを商品にする。

選べない服が、選ばれる服になるまで。日本のファッションの、いちばん静かで、いちばん人数の多い現場は、たぶん毎朝の駅のホームにある。

この続きを、映像で

ここに書いたことの多くは、実際の着こなしを見るほうが早い部分があります。当サイトは日本のファッションの公式チャンネルを集めています。街の着こなしなら原宿・渋谷のストリート、コーディネートの組み立てなら着こなしとコーデ、衣装をつくる側の話ならコスプレと衣装づくりのチャンネルが並んでいます。全チャンネル一覧では、掲載しているすべてのチャンネルと、その掲載理由を見られます。

参考資料(この記事を書いた日に、実際に開いたもの)

数値はいずれも2026年9月5日時点で公開されていた資料に基づきます。菅公学生服の各調査は、同社が実施・公表したインターネット調査です(対象者数・実施時期は本文に記載)。公正取引委員会の調査は入学者選抜を実施していない公立中学校を対象とし、平成28年12月〜平成29年7月に行われたもので、私立・高校には当てはまりません。価格は当時のものです。校則や制服の運用は学校ごとに異なりますので、進学先の実際の規定については各学校の公表資料でご確認ください。この記事は文化についての随筆であって、個別の進学助言ではありません。